『わびさび』は哲学か、それともデザイン様式か?この概念を説明するのはとても難しいことで有名です。「わびさび:日本の無常の美学」の著者アンドリュー・ジュニパー氏は「著名な日本の学者でさえわびさびには近寄らず、非常に『詩的な表現』でしか語らないという日本の伝統を守っている」と書いています。
西洋の一般的な哲学の理解とは異なり、わびさびは思想や原理原則に置き換えることができないうえに、様式に関する一定の法則をまとめることもできません。というよりも、それは日常に浸透する生きた美学の体験で、身の回りにありふれたものを崇高に見せます。
視覚的な様式とライフスタイルの両面に宿るわびさびの精神を見るには、ペンシルバニア州バックス郡にある14エーカー(約5万6700平方メートル)の閑静な邸宅、ビラ・テラ(大地の家)をご覧ください。
すべてを包み込む静けさの感覚
外装や内壁は時間の経過と共に風化し、質感が表れます。人間の手仕事を物語る職人技。物質、植物、戸外の風景で際立つ自然の要素。これらがわびさびの特質です。人為的な対称性や策略より、形あるものとその変わりやすさを感覚的に理解することが優先します。
Dana Lansing – Kurfiss Sotheby’s International Realty
ビラ・テラでは切り出した石段の入口が家の中心にまっすぐ通じており、簡素で上品な家具が置かれたロビーが広々としたリビングルームにつながっています。足元のタイルをご覧ください。典型的なモデルハウスと異なり、ここではタイル1枚1枚の色調や質感が異なり、自然で、芸術的なイメージを醸し出しています。また暖炉付近はミニマリスト様式が採用されています。暖炉のその表面の粗さが威厳を与え、同様の質感で統一されたコーヒーテーブルが、美しい調和を奏でています
不完全の極致を受け入れる
「ビラ・テラ」という名前は文字通り「地球にある田舎の邸宅」を意味し、素朴な美しさと粗い縁を備えたキッチンが、わびさびの美学を体現しています。
Dana Lansing – Kurfiss Sotheby’s International Realty
砂時計型の椅子のそれぞれの形が少しずつ異なる点にもご注目ください。レンガ色の床の傷が隠されずに堂々と見せられ、織りのじゅうたんが、この空間の機能的なシンプルさを損なうことなく、暖かさと色彩の豊かさを加えています。
使い古された美しさと暖かさ
どうすれば、わびさびを言葉で伝えられるのでしょうか?「侘び」には簡素、謙虚さ、哀愁、静穏の味わいなど、多くの意味があります。同様に「寂び」も様々な解釈が可能ですが、色あせて使い古した物に本質的な美しさがあるという認識もその一つです。この2つの要素をかけ合わせ、現実とはかなさの価値を強調し、不完全な世界で信じられないほどの美しさを吟味するために時間をかけます。
Dana Lansing – Kurfiss Sotheby’s International Realty
周囲の環境の素晴らしい景色を望むビラ・テラの主寝室は、静かな瞑想へと誘います。頑丈な石細工と素材のままの織物が柔らかい毛布とフラシ天の枕と併置され、幸せな、活力を取り戻す調和の雰囲気を作り出しています。
自然なする
快適さは非常に重要です。わびさびのインテリアは簡素に見えることが多いですが、見てもいいが触れてはいけない美術館を意図したわけでも、禁欲を優先する修道院をイメージしたわけでもありません。これらは快適で充実した生活を送ることを目的として制作、設置されています。
Dana Lansing – Kurfiss Sotheby’s International Realty
ビラ・テラの浴室は、特注のサウナの明るい木製パネルから、人造大理石の表面の豊かな輝きまで、これらの全てを象徴しています。機能的で、外見が素晴らしいと同時に土っぽさが注入されているため、形状が大変美しい空間です。
変遷や変化を祝う
わびさびはすべての感覚に関わるため、ビラ・テラの敷地や庭もとても壮観です。木の上を吹き抜けるそよ風や、クックス川の緩やかな流れが、ベランダ、暖炉、日光浴のテラスでくつろぐ時間に心地よい癒やしを与えてくれます。心を落ち着かせる香りも、花咲く春から秋の落ち葉まで季節によって異なり、同様の効果があります。
わびさびから学ぶことが一つあるとすれば、真の完璧さは欠点の中に見いだすことができ、真の価値は年月を重ねてこそ理解できるいうことかもしれません。ビラ・テラのような家が住民に畏敬の念を起こさせ、刺激を与え続ける理由はこの精神にあります。
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