建築、工業、インテリア、ファッション-それがどんな分野であっても、「タイムレス」という表現はデザインを語る言葉として軽々しく使われるべきではありません。「タイムレス」と呼べるデザインとは、それが時代遅れになることなく、何世紀にもわたってインスピレーションを与え続けているものだけです。
「タイムレス」を実現しているのは、選び抜かれた数少ないスタイルだけ。建物を選びそして設計するときは、そのスタイルを持った希少な物件に目を向けてください。チェックすべき項目は5つ。屋内そして屋外のリビングスペース、キッチンとバスルーム、外観の第一印象です。今回は、ターゲットをアメリカ全土だけではなくヨーロッパにまで広げてご紹介します。まさにタイムレスな美しさのショーケースと呼べるハイエンドな5つの物件です。
インドアリビング:漆喰壁が惹きたてるインテリアの色調と質感

Nicholas Canning and Michael Canning – Sotheby’s International Realty – Carmel Brokerage
インテリアをより際立たせたいと思ったら、壁の素材を漆喰に変えてみてはいかがでしょうか。石灰と石膏を混ぜた材料で造られた古代エジプト王の陵墓、古代ローマの象徴的なスタッコ塗りの建築、ルネッサンス期のイタリアで始まった大理石と石灰岩の粉で作ったマルモリーノなど、漆喰は何千年にもわたって使い続けられています。
かつて漆喰壁は建造物の主要な工法でしたが、20世紀半ばには低価格の石膏ボードに取って代わられてしまいました。しかし、インテリアデザイナーにとって石膏ボードは漆喰ほど魅力的な素材にはなり得なく、モダニズム建築とともに漆喰が再び見直されるようになりました。カリフォルニアの人気リゾート地域ペブルビーチに建つプレミアなこの邸宅が漆喰を選んだ理由はここにあります。
キッチン:シェーカー様式のキャビネットが創る永遠のベーシック

Neill Bassi – Sotheby’s International Realty – San Francisco Brokerage
テレビ番組などでしばしば紹介されるシェーカー様式のキャビネット。しかし、このキャビネットの流行は最近のことではありません。シェーカー様式の始まりは18世紀まで遡ります。体をゆらす礼拝の様子が特徴的な「シェーキングクエーカー」の名で知られる「キリスト再臨信仰者協会」がクエーカー運動本体から分離し、アメリカ各地に住宅を建て始めた頃です。
シェーカーの家具は真面目さと職人芸をモットーに、シンプルでありながら他にはない優れたデザイン性を持つ家具として、19世紀から現在に至るまで多くの家庭で親しまれています。「デザインフォーワード」をポリシーにしたサンフランシスコに建つ邸宅―ここではそのシェーカー様式を存分にご覧いただけます。その他にも、ミーレ社製のキッチン用品や大理石を使ったアイランド式キッチンカウンター、格納式のガラス壁の向こうにはグリルやダイニング料理が楽しめる屋外デッキ。キッチンにも数々の工夫が施されています。
バスルーム:クラッシックな脚付きバスタブでスタイリッシュなバスタイム

Chase Mizell – Atlanta Fine Homes Sotheby’s International Realty
床置き式バスタブが使われなくなったのは、美しさと品質よりもコストパフォーマンスが優先されたからです。作り付けのバスタブは、価格の安さと掃除のしやすさが人々に受け入れられ需要が増えましたが、入浴の代わりにシャワーが一般的になるとそのピークを迎えました。しかし19世紀の半ばから、脚付きのバスタブは伝統的なバスルームを象徴する一品でありつづけています。
その脚付きバスタブが放つタイムレスな美しさが、ジョージア州に建つこの素晴らしい邸宅にはしっくりと溶け込んでいます。この邸宅では、何世紀もの伝統を感じさせる石工や煉瓦工の技術を目にする一方で、最先端の設備やソーラーパネルなどの大胆な未来志向も取り入れられています。石灰岩の暖炉、梁が美しい天井、高級仕立ての服も安心して保管できるウォークイン・クローゼットなど申し分のない設備が備わった主寝室。でも、この主寝室を完璧な空間に仕上げているのは、このバスタブなのです。
縁取りの美しさ:ブラックフレームの窓で大胆にアピール

Jeff Perkins and Stephanie Oliver – Dielmann Sotheby’s International Realty
クラッシックなデザインの中には、思いがけないことから生まれたものがあります。例えばブラックフレームの窓。スタイリッシュでモダンなデザインですが、その起源は19世紀の工業建築です。古い作業場や製造工場が格安の芸術家向けロフトやワークショップなどのクリエーティブなスペースに転用されたことで、汎用性が高く視覚的にインパクトのあるブラックフレームの窓が注目されるようになりました。
ブラックフレームの窓が創り出す美的センスは、農場に建つ家にもそしてアートギャラリーにもモダンなアクセントを添えてくれます。ブラックフレームの窓から見る眺めは、まるでフォトフレームで飾られた写真を見ているようです。ミズーリ州の8エーカーの自然保護区の森林に母屋とゲストコテージ配した魅力的な農家風邸宅。この邸宅を訪れると、そんな風景を楽しむことができます。
アウトドアリビング:ラタン家具でゴージャスにくつろぐパティオタイム

Côte d’Azur Sotheby’s International Realty
ラタン家具のあるポーチ、ガーデン、ガゼボには悠久の趣がありますが、これらはいったいどの時代をイメージしているのでしょう。ナチュラルな色と質感そして素材を使ってモダニズムを復活する機運が高まった1960年代や1970年代でしょうか。それともエキゾチックな輸入品を珍重したヴィクトリア朝の19世紀でしょうか。はたまたウィーンの藤編み椅子が中欧や北欧で普及した18世紀でしょうか。答えは——これらすべての時代です。
だから、仏ニースに建つこのゴージャスな邸宅のプールサイドにラタンの調度品がぴったりと似合うのかも知れません。コートダジュールの貴族達を彷彿とさせる荘厳さとゴージャスでモダンな仕上げがブレンドされたこの建築だからこそ、時空を超えた流行と伝統を持つラタン家具と完璧なハーモニーを奏でることができるのです。
今回ご紹介した5つの物件が語る共通の特長は、最高のデザインには長い歴史と無限の魅力そして時を超えた影響力があるということです。これらの特長を今お住いの家に取り入れたり、またはこれから物件を探すときのヒントにしたりすることで、いつの時代にも燦めきを失わないリビングスペースを創り出すことができるでしょう。
デザインについてもっと多くのインスピレーションをお探しなら、ナチュラルな素材を活用した5つの持続可能なトレンドをご覧ください。