ラリー・モンテカルロとモナコ・グランプリ。これら名高いレースの開催地、 モナコ公国では、かつて同じレースで活躍した旧車の祭典も開かれている。 さらに主催するモナコ自動車クラブは、最先端の電気自動車レースにも積極的だ。 豊かなリゾート国で、往年の名車を懐かしみ、次世代のモータリゼーションを垣間見る。 ![]() ⒸACM MICHAEL ALESI 「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」でモナコ市内に集まる旧車。ポルシェ911SCやアルピーヌルノーなど、往年の名車が一堂に会する。 |
ラリー競技は、1911年にモナコを中心に開催された「ラリー・モンテカルロ」が最初だといわれている。当初はモナコ大公家による観光振興の一貫。自動車の冒険旅行を嗜好する上流階級が、欧州各地からモナコに集まった。50年代からは、自動車メーカーによるワークスチームも参戦。時代ごとに市販車をベースとした競技車がしのぎを削り、後に名車として語り継がれる。1世紀以上にわたり、モータースポーツの発展に貢献してきた。 現在は例年1月に開催され、世界ラリー選手権(WRC)の年間シリーズ開幕戦でもある。その数日後に、「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」という旧車ラリーも開催。55年から80年の期間にラリー・モンテカルロの出走記録がある車種のみ出場権がある。まず英国やポルトガルなどから最長4日かけモナコに集合。最終日にモナコ近郊の規定走行時間が設けられた区間で、タイムの正確さを競う。季節柄、雪道での走行となることが多く完走も難しい。世界中の旧車愛好家の晴れ舞台でもあるが、近年は東京大学と整備士専修学校との共同チームという学生の参加も見られる。次回で8期目となり、国際的なものづくり教育の場として高く評価されている。 ![]() 昨年の「モナコ・グランプリ・ヒストリック」。写真は、1976年に名ドライバー、ニキ・ラウダが乗ったフェラーリをモデルとしている。次回は来年5月に開催。 一方、フォーミュラワン(F1)が生まれる20年以上前から開催されているモナコ・グランプリにも、旧車版レースの「モナコ・グランプリ・ヒストリック」がある。2年に1回、5月のF1グランプリ本大会の約2週間前に開催。第二次世界大戦前のレーシングカーから、80年のF1マシンまで、年代別に分けられた7つのカテゴリーで競われる。伝統の市街地コースをそのまま使用。F1レーサーが勝利に特別な価値を見出す難しいコースではあるが、2014年大会では日本人選手も優勝している。 選手、ファンともに一目置くモナコのカーレースは、そのすべてを「モナコ自動車クラブ」が主催している。近年は電気駆動版のフォーミュラカー、フォーミュラ Eの「ePrix(イープリ)」や、電気自動車と燃料電池車による「eラリー」も開催。今年のモナコe Prixでは、19年から参戦予定のポルシェ首脳陣が視察、その他ドイツ系メーカーのシリーズ参戦も決まり年々注目されている。 「モナコ自動車クラブ」内にある会員限定レストラン「ル・クラブ」。20世紀初頭の車両が飾られている。(写真:木村金太) さて、同クラブは19世紀末の自転車クラブがルーツという歴史ある名門クラブでもある。入会条件は極めて厳しいが、世界中どこに住んでいても入会可能。加入すれば会員限定レストラン「ル・クラブ」の利用やF1観戦チケットの優待などの権利も得られる。旧車オーナーにとっては、クラブのプレートを付けることもステータスのひとつだ。 レース観戦以外の観光でも、モナコらしい自動車文化の楽しみ方はある。そのひとつが、高級スーパーカーや年代物のヴィンテージカーのレンタル。「オテル・エルミタージュ・モンテカルロ」をはじめモナコの高級ホテルであれば、予約や配車手配も対応してくれる。個性的な一台を操り、モナコ・グランプリのコースをたどってもよいだろう。 旧車から非化石燃料車まで。自動車への高い意識が、モナコには息づいている。 文:藤田真二(オフィス インターフェイス) *内容は2017年9月17日時点のものです。 |